1.BARって……?
ホテルのお仕事に携わっていると「バー料金」或いは「バー」という言葉を耳にすることがあります。
ここでいうバーとは、お酒を飲む場所ではなく、Best Available Rate、いわゆるBAR(バーと発音する)のことを指します。
BARとは、最低価格を意味をしており、全てのお客様が制限なく予約することのできる料金のことをいいます。
要するに、早期割ですとか返金不可ですとかRun of the House(お部屋お任せ)などの、何かしらの制限をかけた上で予約可能な料金ではなく、ノーマルプランでの最低価格のことをBAR料金と呼びます。
BARは、レベニューマネージャーが持つ刀のようなもので、ダイナミックプライジングが採用されているホテル業界においては、いたるところで施設同士のBAR料金によるつばぜり合いの音が聞こえてきます。
BARはそれくらいホテル業界において重要な役割を果たしています。
競合施設のBAR料金を確認しポジショニングを決定する
BARがなぜ重要なのかを説明するために、まずは競合施設のBAR料金を確認してみましょう!
競合施設のBARを知ることで、自社の価格を決定するための参考にすることができるはずです。
注意したい点としては必ずしもエリア内で最安値にするべきだという話ではないという点です。
そのエリアにはきっとビジネスホテルやシティホテル、高級ホテル等、様々な施設が点在しているはずです。
自社の施設が高級ホテルであれば、他の高級ホテルと比較し、自社の施設がビジネスホテルであれば、他のビジネスホテルと比較し、どの価格帯が適正かを考えることが重要です。
また、自施設のポジショニングを決定するためには、競合施設の料金だけでなく、施設のレベル、設備、サービス内容なども考慮する必要があります。
それぞれの施設が提供する付加価値を比較し、自社の強みを見出すことが大切なのです。
3.BARの上げ下げをするメリット・デメリット
次に、BARレートの操作がもたらすメリットとデメリットを考えてみましょう。
BARを操作するメリット
BARを上げるメリットとしては、高収益化が挙げられます。
高額な料金を設定することで、高額な収益を得ることはもちろんですが、高所得者へのセグメントの選定も実現しやすくなります。
また高級ホテルであれば、高級感をアピールすることで、ブランドイメージを高めることができます。
一方、BARを下げるメリットとしては、宿泊率の向上が挙げられます。
低価格で提供することで、多くの宿泊客を引きつけることができます。
BARを上下することのデメリット
もちろんBARを上げ下げすることにはデメリットもあります。
BARを下げる際の最大の問題は既存予約の取り直しでしょう。
例えば10000円の予約があったとしましょう。
その日程がどうしても自身の想定する売り上げに間に合わず、受注を多くとるため、BARを8000円に下げたとします。
こうすることで新規予約への期待を上げることができます。
ただしそれに気づいた10000円で予約した既存予約のお客様が、8000円の予約へ取り直すこともあり得ます。
本来10000円の売上だったものが、8000円の予約に取り直されることで、本来あった売り上げから2000円のマイナスが発生してしまいました。
既存予約が多ければ多いほどこのリスクは肥大化していきます。
だからこそBARを下げる場合はそれなりの覚悟を持って対応しなければいけません。
その他にもBARを下げることによるデメリットには、施設の価値が低くなり、ブランドイメージを損なうことにもつながるという点も考えれます。
そのため、BAR料金を決定する際には、慎重な判断が必要です。
4.最終的にBARを下げて部屋を売ることは失敗である
上述した通り、BARを下げて宿泊率を上げることができるということは、確かにあります。しかし、最終的にBARを下げて部屋を売ることは失敗であると言えます。
なぜなら、BARを下げることで、その施設の価値が低くなってしまうからです。低価格で提供することが、一時的な需要を生み出すかもしれませんが、その後、再びBAR料金を上げようとすると、宿泊客からの不信感を生んでしまう可能性があります。
また、競合施設との差別化ができなくなり、顧客獲得のために新たな施策を打ち出す必要が生じる可能性があります。
そのため、BARを下げる場合でも、長期的な視野で考え、施設の価値を下げないように注意する必要があります。
5.まとめ
以上のようにBARは、ホテルセールスにおいて非常に重要な役割を果たしています。
競合施設がどのようなレートを出しているかを読み解き、エリアマーケットを分析し、自社の施設にとって収益を最大化するためのBAR設定を考えることはとても重要です。
とは言え、最後の最後、自施設のレートを決めるのは、自施設であることを忘れないでください。
BARの決定は、競合施設のレートを基準にするのではなく、あくまでも自施設を基準に競合のBARを参考にするという意識がとても大切です。
競合のBARにあわせて価格の上げ下げばかりに興じていると、顧客から信用をされなくなり、施設のブランド価値を下げるだけでなく、自施設のレートすら見えなくなってしまいます。
BARに振り回されるのではなく、BARを支配して最大の収益を目指していきましょう!