GOPPARって……?
レベニューマネージャーにとって重要な指標としてRevPerをご紹介しました。
ADR、OCCをかけ合わせた数値を瞬時に評価できるRevPerは弱点のない指標にも見えますが、収益を管理する者として売上だけでなく利益にも着目することが必要です。
客室売上のみにフォーカスしたRevPerに対して、GOPPARは客室収入と客室以外の収入もすべて含めた売上を司る指標です。
ホテルの売上は、客室だけでなくレストランやショップ、エステサロンなど、様々な客室以外のセクションからもたらされます。
それらの売上から利益を計算し、1ルームあたりの利益を計算することでホテル全体のパフォーマンス、事業実績を確認することのできる指標、それがGOPPARです。
GOPPARの計算式
(営業売上合計 - 販売経費) / 販売可能客室総数=GOPPAR(客室平均粗利益)
まず営業利益(営業売上合計 - 経費)の算出をして、それを販売可能客室数で除算するとGOPPARが算出できます。
経費に関してはリネンや清掃費、食材や手数料など、様々なコストが考えられるため、これまでの指標のように日毎に算出することは難しいでしょう。
そのため、月、年で確認していくことが一般的だと思われます。
RevPerの限界
前述の通り、客室売上のみにフォーカスしたRevPerのみでホテルの業績が評価できるかと言えば答えはNOです。
以下の場合を考えてください。
ADR | OCC | REVPER | 販売室数 | 宿泊人数 | |
A | ¥10,000 | 100.00% | ¥10,000 | 100 | 200 |
B | ¥12,500 | 80.00% | ¥10,000 | 80 | 160 |
C | ¥20,000 | 50.00% | ¥10,000 | 50 | 100 |
D | ¥25,000 | 40.00% | ¥10,000 | 40 | 80 |
上記はA~Dの施設がそれぞれRevPer,000の場合の宿泊室数と宿泊人数を示した表です。
本来は絶対にありえないことではありますが、今回はGOPPARを説明をするために、4施設共に室数、DOR、収入、コストは以下の表の通り同一とさせていただきます。
条件 | ||||||
販売可能客室 | DOR | 宿泊外収入/人 | コスト/部屋 | 変動コスト/人 | 宣伝コスト/人 | 固定コスト |
100 | 2.0 | ¥5,000 | ¥2,500 | ¥1,500 | ¥500 | ¥200,000 |
売上
既にご覧いただいたとおり、4施設共にRevPerは同じであり、宿泊のみの売上は1,000,000で同一となります。
しかし宿泊人数が違うため宿泊外収入(今回はレストラン利用を想定)は変動します。
そのため、総売上はそれぞれ以下の表のようになります。
宿泊総売上 | 宿泊外総売上 | 総売上 | |
A | ¥1,000,000 | ¥1,000,000 | ¥2,000,000 |
B | ¥1,000,000 | ¥800,000 | ¥1,800,000 |
C | ¥1,000,000 | ¥500,000 | ¥1,500,000 |
D | ¥1,000,000 | ¥400,000 | ¥1,400,000 |
客数が多いAの場合、宿泊外の売上が全体の50%を占める割合になっております。
客数の少ないDは宿泊以外の収入を作るのに苦戦しており、総売上はもっとも低い結果となりました。
このように同じRevPerでもホテル全体の売上は宿泊人数によって大きく変わってくることがわかります。
コスト
次に変動するコストを以下の表にまとめました。
コスト/室(清掃・リネン等)、コスト/人(飲食の原価を想定)、固定コストは施設の維持費、宣伝コストは一人あたりにかけたマーケティングコストとして設定しました(宿泊人数が多いほど多く宣伝をする必要があるため)。
コスト/客室 | コスト/人 | 宣伝コスト/人 | 固定コスト | 総経費 | |
A | ¥500,000 | ¥300,000 | ¥100,000 | ¥200,000 | ¥1,100,000 |
B | ¥400,000 | ¥240,000 | ¥80,000 | ¥200,000 | ¥920,000 |
C | ¥250,000 | ¥150,000 | ¥50,000 | ¥200,000 | ¥650,000 |
D | ¥200,000 | ¥120,000 | ¥40,000 | ¥200,000 | ¥560,000 |
当然ながら部屋をあまり使用していないDは、コスト面で最も有利であり、最も部屋を使用したAの約半分までコストを抑えていることがわかります。
GOPPAR
ではGOPPARを計算しましょう。
各施設の総売上-総経費/販売可能客室数で算出すると以下のような結果となります。
宿泊総売上 | 総経費 | 粗利益 | GOPPAR | |
A | ¥2,000,000 | ¥1,100,000 | ¥900,000 | ¥9,000 |
B | ¥1,800,000 | ¥920,000 | ¥880,000 | ¥8,800 |
C | ¥1,500,000 | ¥650,000 | ¥850,000 | ¥8,500 |
D | ¥1,400,000 | ¥560,000 | ¥840,000 | ¥8,400 |
粗利益、GOPPAR共にAから順に優勢であることがわかります。
要するに前提条件の売上とコストのバランスであれば、部屋を売れば売るほど利益が上がることがわかります。
このように、GOPPARはRevPerだけでは認識できない、”利益”を一部屋あたりいくらで創出できているかを確認できる指標です。
施設の形態によっても異なる目標値
先程のケースは宿泊者が飲食を楽しむことを想定した内容となっておりましたが、
同条件で部屋のみを販売するビジネスホテルだった場合はどうなるでしょう?
条件を宿泊外収入、宿泊外コストを0にした以下の内容に変更します。
条件 | ||||||
販売可能客室数 | DOR | 宿泊外平均収入/人 | 変動コスト/部屋 | 変動コスト/人 | 宣伝コスト/1名 | 固定コスト |
100 | 2.0 | ¥0 | ¥2,500 | ¥0 | ¥500 | ¥200,000 |
途中の計算を省略し、GOPPARを計算すると以下のような結果となりました。
宿泊総売上 | 総経費 | 粗利益 | GOPPAR | |
A | ¥1,000,000 | ¥800,000 | ¥200,000 | ¥2,000 |
B | ¥1,000,000 | ¥680,000 | ¥320,000 | ¥3,200 |
C | ¥1,000,000 | ¥500,000 | ¥500,000 | ¥5,000 |
D | ¥1,000,000 | ¥440,000 | ¥560,000 | ¥5,600 |
先ほどとは逆に、Aの場合、部屋を売れば売るほど清掃代がかさみ、利益は減少していくようになりました。
逆に単価を高く取って稼働部屋数を抑えたDが最も利益を作ることに成功しております。
ビジネスホテルでADR25,000は非現実的ではありますが、売上と経費のバランスによって、同じRevPerでもGOPPARが異なることがよく分かるかと思います。
GOPPARを知る第一歩として、まずは月間の総利益からホテル一室あたりの利益を計算してみることをおすすめします。
そこから目標値などを試行錯誤してみると面白いかもしれませんね。
その施設の形態や利益構造によってどの程度の部屋数をどの程度の料金で販売するのがベストになるかは異なるはずです。
GOPPARにフォーカスすべき理由
実のところ、単価を上げるのも稼働を上げるのもとても容易いことをホテルの予約担当者はよく理解をしています。
そして、それらを両立させることがいかに難しいかも痛いほど理解しています。
単価はできる限り値上げすれば、稼働はできる限り値下げすれば、それなりに動いてくれます。が、それらを同時に実行することは当然不可能です。
またそのような根拠のない値上げや値下げをする行為が以下にバカバカしいかは説明不要かと思われますが、実はRevPerも同じことが言えるのです。
もしもレベニューマネージャーの評価指標をRevPerのみに設定した場合どうなるでしょうか?
前述の通り、RevPerはホテルの客室売上を司る指標です。
要するにRevPerのみをフォーカスするということは客室の売上のみを考えていることと同意であり、極端な話、そこにかかるコストをまったく考慮しなくなる可能性が生じてしまうのです。
例えばOTAなどでありがちなポイントXX倍プランの倍率を思い切りあげてみたり、送客手数料を上げて競合施設よりも優位にツアーのセールスを行ったりなど、利益率は低いが売上は上がっていくような施策に傾倒してしまうかもしれないのです。
そうなると最も追いかけなければいけないはずの”利益”が最も蔑ろになってしまうことになります。
だからこそ売上だけではなく利益にフォーカスしたGOPPARもRevPerと同じくらい重要な指標と位置付けされているのです。
ちなみにGOPPARを見ていればRevPerは必要ないわけではなく、どちらもとても大事な数字なのでしっかりと覚えておきましょう。